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FLCスタッフエッセイ

2015.05.14 こころとからだ
からだの声に耳をすます

                                         金山 あき子

 

産まれてからずっと、「わたし」と共にある「からだ」というもの。あまりに在るのが当たり前なので、現代社会では、意外と「からだ」で生きているということを忘れがちなのかもしれません。 学校でも、小さい頃から「頭」を使うことが大事とされるので、からだ全身を使って感じたり、遊んだりという機会も減ってゆき、そうすると「からだ」はどこか遠いところへ押しやられてしまいます。私たちのからだは、自分が一生つきあうことになる、大切な場所。この場所を自分の家のように考えて、より気持ちよく過ごせるように、からだの声を聞きながら、整えてゆくことは、とても大切なことと思われます。

 ◇からだと心はつながっている

東洋では、昔から「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。それは、「心」と「からだ」はひとつであり、分けて考えられないものであるという意味です。たとえば、私たちは怒った時の感情を「頭にくる」、「腹が立った」など、からだの部分を使った表現を自然に使いますが、これも心で起こっていることと、からだで起こっていることが密接に繋がっていることを示しています。

私たちのからだは、常に声を発しています。例えば、何か楽しいことがあった時や、大好きな音楽を聴いている時など、からだにはワクワクして、大きく広がってゆくような、心地よい感覚が走るでしょう。また何か悲しいこと、つらいことがあった時には、からだにはどこか固く、縮こまったような感じがあることでしょう 。ふと目を向けてみると、からだは、頭で考えるよりも先に、色々な情報をキャッチし、また外に向けて発しています。からだには独自の知恵があり、時には「わたし」よりも深く、「わたし」のことを知っているのかもしれません。

 ◇日常の中で気づいてみよう。

日々の生活の中で、少しからだの声を聞くことを意識してみましょう。例えば、「なんだか今日はやけに肩が凝るなあ」という日は、少し肩に意識を向けてみましょう。その肩の緊張は、どんなことをあなたに話しているでしょうか。一見不快な感覚も、何かメッセージを運んでいるかもしれません。いま、この身体で、何が起こっているのかに気持ちを向けてみましょう。そうすると、その緊張は、目を向けてもらったことで少しゆるむかもしれません。または、「ああ、私はこんなことで少し無理をしていたんだなあ・・」、「こんなことが苦手だったんだ」など、今まで気づかなかった洞察を得ることもあるでしょう。

また、自分が何に心地よい感覚を感じるのかに目を向けてみましょう。新緑が芽吹く山を見て、胸が広がってゆくような感覚がする。外の鳥のさえずる声を聞いて、からだ全体が澄み渡るような感じがする。または、バラの花のうっとりするような香りに触れ、深いところが解放されるような感覚・・・などなど、何でも自分にとっての「快」の感覚をからだで感じてみます。心地よいと感じる感覚により多く気づくことで、自分がリラックスし、安心できるスペースを作ることができます。その感覚を生かして、よりストレスにも対処できるようになるでしょう。

 ◇からだという自然

私たちのからだには、様々なリズムがあります。普段は中々意識しない、心臓の鼓動や、呼吸のリズム。そして女性には特に、月経、妊娠・出産、更年期など、人生を通じて身体に直接関わる周期やリズムが、節目ごとに存在しています。からだの声に耳をかたむけることは、自らの内に、自然のリズム、自然とのつながりを取り戻す事でもあります。世界のあり方がより複雑になり、ますます自然とのつながりが薄れていく今日、まずは自分のからだに向き合ってみるということの意味は大きいと思われます。日常の何気ないことから、身体の感覚に気づくことをはじめてみませんか。たとえばそれは、レストランで食べる時、「頭」で考えるのでなく、本当に食べたいものを一度「お腹」に聞いてみることかもしれません。または、からだの動きたいようにダンスすること、散歩や、ヨガなどの運動をしてみることかもしれません。からだの声に耳をかたむけ、小さいことからはじめてみると、案外、新しい発見や気づきがあるかもしれません。

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