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FLCスタッフエッセイ

2015.06.24 子ども/子育て
"落ち着かない子ども"の気持ち

                                                                                                                                            福田 ちか子

 

 先日,FLC(女性ライフサイクル研究所の愛称)で開催しているCARE(ケア)の講座に,サポートスタッフとして参加した際に,とても興味深い体験をしたので紹介したい。

 

 その前に,少し講座の紹介をしようと思う。CAREというのは,米国オハイオ州シンシナティ子ども病院で開発された,子どもと関わる大人のための心理教育プログラムで,子どもとの間に温かな関係を築き、関係をよりよくする際に大切なコミュニケーションのコツについて,体験的に学ぶことができる講座である。一日5分,子どもが遊びをリードし、親がそれについていく関わりをすることで関係が改善し、子どもの自尊感情を高めることにもつながる。

 

 その中で,今回興味深い体験をしたのは,大人が二人一組で,一人が母親の役を,もう一人が子どもの役をして,子どもが遊びをリードする場合と,大人がリードする場合を,それぞれロールプレイで体験するという場面がある。(以下の会話例は,体験をもとに一部編集・再構成したもの)

 

例えば,

子:「こうやって,車で遊ぶの~!!」

母:「こっちのブロックの車はどう?」  

子:「えっと...じゃあそうするね」

母:「窓もつけて見たら?きっと格好良いよ!」         (大人が主導の例)

 

子:「こうやって,車で遊ぶの~!!」

母:「そう~,車で遊ぶのね」 

子:「うん。車を走らせて,お出かけごっこするの」

母:「おでかけごっこするのね~」               (子ども主導の例)

 

 それぞれの関わりについての詳しい説明はここでは置くとして,おもしろかったのが,子どもの役になった時の,自分の心の動きだった。母親役から,特に何か傷つくような言葉を言われるわけでも,母親役が怖い言葉を言うわけでもないのに,大人が主導のロールプレイでは,相手の言葉に注意が向いて,そわそわして手元に集中するのが難しく,遊びを考える暇がない感じがした。時には自分がしたいことを考える前に言葉が掛かって,イラ立ちを覚えることもあった。

 ところが子どもが主導のロールプレイでは,子ども役である自分の言葉を相手が繰り返して,リードについてきてくれるので,落ち着いて自分の考えに集中することができて,一つの遊びを発展させるようなアイディアが自然と湧いてきたのだった。

 

 大人の関わり1つで気持ちが大きく変化することを改めて実感できて良かったので,是非,子どもとの関係作りに悩む保護者の方や支援者の方にも体験をおすすめしたい。

 

 さてこの体験を振り返ってみて,近年増えているといわれる"落ち着かない子ども"の気持ちについて,思うところがあった。

 

 次々と外から声がかかったり新しいアイディアが降ってきたりして,そのリードについていくため自分の外側に注意が向く感覚と,自分の言葉を繰り返してもらって,じっくり考えを反芻して自分が自分の行動をリードし内側に注意が向く感覚。この前者の感覚が,パソコンやスマホで,ネットをみたりSNSやゲームアプリをしているときの感覚と似ているように感じられた。

 

 本当にいろいろな情報がものすごいスピードで発信されては消えていく日々の中で,自分の内側に注意を向けて,落ち着いて手元の課題に取り組むことは,気をつけておかないと中々に難しいことなのではないだろうか。そう考えると,ここ数年の間に"落ち着かない子ども""キレやすい子ども"が増えている,といわれることが,無関係ではないように思われてならない。自分の外側に注意を向けることと,内側に注意を向けること,そのバランスが取れるように意識することが大切なのだと感じた。

 

 

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