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トピックス by村本邦子

2007.01.29
2007年1月 感情に言葉を与える

 娘は、感情に言葉を与えるのが小さい頃から上手だった。たとえば、5歳の時、不運にも大きなショック体験を経験してしまった娘は、「うち、自分のことがかわいいと思われへん・・・」とポツリと言った。親としては、辛くて胸が締め付けられる思いだったが、上手に伝えてくれるので、フォローもしてやりやすい。心理学用語に置き換えれば、トラウマ後の自己嫌悪、自己否定だ。

 人生にはいろんなことが起こる。つい最近も、ショックなことに直面した娘は、泣いて泣いて気持ちを表現し、友人達から存分に慰めと支えを得、彼女が信頼する大人にも話を聞いてもらったようだ。辛い体験を上手に乗り越える術を身につけることは、これからの人生を生き抜くうえで、どんなにか大きな力になることだろうとつくづく思う。

 「そういうとこ、すごいよね~」と感心していたら、「うち、どうしても人に言われへんことは、自分にメールすんねんな」と言う。何かを抱えて表現できない時、自分の気持をメールにして自分宛てに送って、ロックされたフォルダに入れていくんだそうだ。日記を書くためには、晩、机の前に座らなければならないけど、これなら、その場ですぐにできて、とってもすっきりするという。時々、読み返すのも精神衛生上、良いそうだ。

 なるほど。「いいアイディアだね~。すごいこと考えついたね~」と褒めちぎったら、得意気に、「なっ、そうやろ~。FLCのお客さんたちにも教えてあげたら?」と言う。「ほんまやね~、そうするわ」と、ここに紹介している(もっとも、私みたいに、携帯メールを打てなくて電報になる人には通用しないが・・・)。

 「やっぱり、誰にも言われへんことってあるねんな~。お母さんぐらいになったら、誰にも言われへんことって、もうないかも。この人にはこれ言えない、あの人にはあれ言えないっていうのはあるかもしれないけど、何でも誰かには言える気がする・・・」と言ったら、娘は、「そうか~。うちは、やっぱり、まだプライドあるって言うか、人に良く思われたいっていう気持があるねんな~」と言う。「そっか~。お母さんの場合は、もう、そういうのないかもな~。お母さんのまわりの人たちって、みんなお母さんがこんなんだって知ってくれてるし。今さらいいかっこしようもないからね~」。「いいな~」と娘。

 年を取るにつれ、良くも悪くもありのままの自分で、周囲の人たちにもそれを許してもらいながら、じたばたせずに自分を許せるようになったような気がする。思い返せば、私も、娘くらいの頃には、しんどさを一人で抱えているところあったよな。家族のいろんな事情で、思春期の頃は辛かった。それでも、生来の陽気さで乗り切っていたから、なんていうか、必ずしも嘘の自分を演じていたわけではないが、自分のなかにギャップがあったと思う。日記を書いたり、詩を書いたりはしていたけれど、もっとそこをうまく言語化して誰かに聞いてもらえていたら・・・。

 そもそも、思春期っていうのは、そういう時期なのだろうが、娘を見ていて、私の時よりずっと上手に思春期やってるなと思う。子どもに学ばされることは多いものだ。

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