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トピックス by村本邦子

2008.04.11
2008年4月 フラ&チャンティング

 この春、ハワイ島でフラとチャンティングのワークショップに参加してきた。おもしろい体験だったので、今月はこのことについて。映画「フラガール」ですっかりブームになったフラダンスだが、フラとは、ハワイ語で「踊り」を意味するため、フラダンスという言い方は正しくないのだと知った。ハワイでは、みんな「フラ」と呼ぶ。

 フラには2種類ある。カヒコと呼ばれる古式フラは、古代から伝わってきたフラで、シンプルな太鼓とチャントに合わせて踊るもの。万物への祈りや感謝を表し、神々に向けて踊る。素朴で力強く、かっこいい踊りだ。一方、アウアナと呼ばれるフラは、ウクレレやギターなどモダンな楽器が入り、美しい色とりどりの衣装を着て踊られるモダンフラである。「フラガール」以前に私たちが共有していたフラのイメージはこっちの方だと思う。

 もともと、文字のなかった時代、原住民たちは、物語を踊りによって伝えていた。白人がハワイに上陸すると、全裸に近い状態で踊るのはふしだらであるとフラは禁止された。その後、カラカウアが王位についてから、フラは解禁となり、白人が持ち込んだ楽器も使用して、優雅に踊るモダンフラが生まれたという。

 そして、フラにはチャントがつきものだ。チャントとは、フラを踊る歌のようなものだが、単なる歌というより、「聖なる歌」に近い(「チャント」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、お経だ)。あるクムフラ(クムとは師匠の意味で、フラの師匠を指す)は、「フラは踊りから始まるのでなく、まずは言葉だ。フラを学びたい人は、まず、ハワイ語を学び、チャントの意味を理解するように」と言っている。

 さて、今回は、友人である小田まゆみさんが師事するクム・ケアラのフラ&チャンティングのワークショップに何度かご一緒させてもらった。なにぶん初めてなので、まったくの見よう見まねだが、基本的にフラもかがみ腰で踊るようで、この姿勢はバリ舞踏とも共通するので、初めてにしては、もっともらしく踊れたような気もする(!?)。それに、どうもフラは、みんなできれいに揃えることより、それぞれが神と交わりながら踊ることが大切なようで、私には合っているのかも。自分を信じて踊ることが重要なのだそうだ。ある程度、振りを覚えた2度目には、楽しく(というか気持ちよく)踊ることができた。

 チャンティングの方は、はじめに英語でハワイ語の解説をしてくれるのだが、どうも難しい。音をまね、声を出すことはできるが(そして、これもとても気持ちがいい。ヨガの呼吸に近いのではないだろうか)、チャントの意味を理解するにはちょっと届かなかった。ハワイ語はとてもシンプルで、ひとつの言葉にたくさんの意味があり(たとえば、「アロハ」の意味を伝える子ども向きの絵本を買ったが、これだけでも20ほど違った意味がある)、おなじチャントを何重にも解釈することができるようだ。奥が深すぎる・・・。

 こうしてフラ&チャンティングを学びながら、クム・ケアラを囲む"Na Wai Iwi Ola Foundation"のファンド・レイジングのイベントに参加し、メンバーのフラを見たり、偶然にも、運よく年に1度ヒロで開かれる世界最大のフラのフェスティバルへも行くことができたので(それまでハワイ島ではほとんど日本人観光客を見かけなかったが、このイベントには、たくさんの日本人が来ていた)、結構、フラ体験を堪能した。

 クム・ケアラのチャンティングがあまりに魅惑的なので(何て言うのか、うまく表現できないが、魂に心地よいといった感じ)、無理を言ってCDを手に入れてきたが、驚いたことに家で聞くと、何かが違う。それで、ようやく理解した。きっと、フラは、海辺で、沈む夕日を背景に、ハワイの大自然に抱かれながら踊るものなのだ。何て言うのか、全体のなかに位置づけられて初めてフラなんだと思う。たまたまロミロミを習った人と一緒になったので、他のマッサージと比較してロミロミのロミロミたるゆえんは何なのか尋ねてみたが、どうも、ロミロミの講習の大半はハワイアンの哲学らしい。すべては、ハワイアンのビリーフ・システムのなかに有機的に存在するのだ。断片だけを取り出しても、その本質は見えてこないのだろう。

 それぞれの文化にはそれぞれのビリーフ・システムがあり、そこには伝統によって蓄積された知恵の宝庫がある。そんなことを改めて実感したフラ体験だった。初心者の印象を無責任に紹介しただけなので、無理解や間違いがあるかもしれません。その場合はご容赦を。なお、クム・ケアラのフラ&チャンティング・ワークショップが、近く日本にやって来る。5月21-30日、江ノ島と富士にて。日本の自然のなかにクムのワークショップがどんなふうに全体的にはまるのか興味津々。関心のある方は英語だけどHPで(www.nawaiiwiola.org )。

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